旅路
by
吟兎
〜序章〜 |
其処に、君はいた。 暗い闇の中。 君は、泣いていた。 哀しい闇の中で。 君は助けを求めてた。 辛い、闇の中で。 其処は、真っ暗な闇。 哀しくて、辛くて、孤独で。 そして、わずかな希望を持つことすら、 許されない。 そして少女は、旅に出る。 会った事もない、一人の少年の為に。 助けを求める、少年の為に。 |
−誰かが呼んでいるような気がして。 その日あたしは目が覚めたんだ。 |
〜 第一章 呼んでいる声 〜 |
「…朝、か…。」 その日は雲ひとつない快晴。 とてもすっきりとした日。 しかし、少女、水城凛子はもやもやしていた。 凛子は中3の読書好き、バスケ部レギュラーの少女だった。 それは、昨晩の話である。 その日はいつも通り、宿題を済ませて、 お風呂に入り、それから、いつも通り、布団の中に入った。 そして、目を閉じた。 そして、2時頃だろうか。 声がした。 −助け・・・て。入・・・り口は・・・、すぐ・・そこ・・・ 少年の声だった。 それから凛子が再び眠りにつくまで、 しばらくかかった。 「何だったの・・・?」 夢だとも思った。 しかし、声がやけにリアルに頭の中に残っていて、 夢とは到底思えなかった。 時計を見ると、そろそろ朝食の時間で、 凛子は着替えて下に降りることにした。 「おはよ〜う。」 凛子は1階のキッチンの席についた。 もう、朝食は用意されていて、 既に、姉の愛子は朝練で、家を出ていた。 「いただきます。」 今朝の朝食は、いつも通り、 ご飯、味噌汁に、卵焼きと漬け物だった。 「ごちそうさま。いってきます。」 凛子は、食べ終えると食器を流しに戻し、 鞄を持ち、出かけた。 −は・・・やく・・・っ、助け・・・っ。 まただ。 あの、少年の声。 しかし、凛子は受験生だ。 そんなことにかまってる暇はなかった。 そんな凛子に迫る、黒い影。 「きゃっ・・・!きゃぁぁぁああぁああぁぁぁああっっっ!!!」 少女、水城凛子はそういって、 倒れた。 つづく。。 |
− こんなことになるなんて、 思いもしなかった。 何故あたしは、こんなところにいるのだろう。 |
〜 第二章 天魔界と凛子のチカラ 〜 |
凛子が目を覚ますと、そこは見知らぬ場所だった。 見知らぬ部屋の、見知らぬベット。 それも、普通の日本の家庭、という感じではない。 「・・・っ。」 頭が、痛い。 さっき起こった出来事は、まだ鮮明に覚えている。 普通に学校に向かっていた筈なのに。 そう。急に、穴が現れたんだ。 それも、壁などに空いていたわけでなく、 空中に。 其処に、確か、吸い込まれた。 夢かと思った。 今朝の声のように。 でも、夢なのに、こんな鮮明に映像がでてくるのだろうか? そう思って、『夢』と思うことを、やめた。 その部屋の窓から見る景色は、 良く、ファンタジー系の本で出てきそうな、 そんな、景色だった。 コンコン。 ドアをノックする音が聞こえた。 「失礼します。」 そういって、女性が入ってきた。 二十歳前後のような、若い女性。 髪の毛は綺麗な青。透き通るような水色の瞳を持つ、 とても、とても美しい人だった。 「あ、お目覚めになられましたか。お初にお目にかかります。 私は、ナツキ・ウィルソンと申します。 凛子さまがいらっしゃるのをお待ちしておりました。」 なんだか、良く、解らない。 この人の名前は、日本人らしくない。 凛子さまって・・・あたしは偉いのか? 凛子が、訳が解らない、という顔をすると、 ナツキと名乗る女性は、あわてて説明を始めた。 「あっ・・・すみません!凛子さまはまだこちらに来たばかりで解りませんよね!? あ、あの、此処は凛子さまがお住みになられてる世界ではないのです。」 「・・・ふぅん。・・・っ、じゃなくて!どういうことですかっ??」 「え、えと、凛子さまのお住みになられてる世界を‘地球界’と言いましてっ。 この世界を、‘天魔界’と言うのですっ。」 地球界?天魔界? 全く聞き慣れない単語だ。 「天魔界の天の王子が、魔の王にさらわれたのですっ・・・。 王子は魔力が高いので、それを狙った王に・・・。」 「ちょっ、待ってよ!?そこでなんであたしが此処に来たか、 全くと言っていいほど解らないわ!」 「人は皆、魔力を持っているのです。 そして、天魔界は、すべてが魔力で成り立っています。 しかし、地球界では『科学』が発達したため魔力を必要としません。」 おいおい・・・魔力って・・・ あたしは本の中にでも入ったのか? 「地球界の人はどの世界よりも魔力が強いのですが、 その中でも、凛子さま。貴女が一番お強い魔力を持っていたのです。」 「えっ?な・・・なにそれっ・・・?」 「凛子さま。心の中で、水をイメージして、心の中に現れた言葉を、 言ってみてください。 それで、解りますわ。」 仕方がないので、凛子は言われたとおりに 水をイメージした。 《水よ、私の力の糧となれっ!》 そう、凛子が言うと凛子の周りを水の糸のようなものが覆った。 「それが、凛子さまのお力ですわ。 今は小さくても、なれればお強くなる筈ですわ。 そして、本題ですわ。 私たちと旅をしてくださいませんか?」 「・・・え?」 つづく。 |
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〜次回予告編〜 |
その旅は、辛い。 その旅は、哀しい。 けれど。 その旅は、嬉しい。 その旅は、楽しい。 そして。 その旅は、幸せを呼び込むことだろう。 そう、ナツキは言う。 そして、凛子の決断の時。 凛子は、 「わかった。」 そう、静かに言った。 そして始まる。 凛子の旅が。 王子を救うため。 見たことも会ったこともない、 一人の、「王子」と呼ばれる 少年を。 ++++++++++++++++++++++++++++++++ ※ンツ。。 次回頑張って書きます!! でも期待しないでね!(笑 |
〜 第三章 旅の始まり 〜 |
− 険しくて、辛くて。 でも、それを覚悟して。 |
「旅…ですか?」 凛子が訊き返すと、ナツキはコクリと頷いた。 「今の、魔法…もよく判らないのに、旅…? どうして…私でなければならないの?」 「それにはお答えできません。 全ては神の意思であるから…」 こういった話を続けるうちに、凛子はもどかしくなり、 言った。 「わかった。」 そう静かに、凛子は答えた。 「そう言って頂けると思っていましたわ。」 おいおい…本当かよ… まぁ、それはおいといて… 「王子の居場所は判るのですか?」 「はい。推測ではありますが、 魔の王の城のどこかにいらっしゃると思いますわ。」 ま、そりゃそうだろうな… 訊いたあたしが馬鹿だった。 「じゃぁ、行きましょうよ。 一秒でも早く助けたいんでしょう?」 凛子がそういうと、ナツキは満面の笑みで 「はい!」 と答えた。 …所変わって魔の王の城 「はははっ。天の王子といっても、 私に簡単にさらわれるようでは、そんなに強そうではないな。」 黒い影がそう言った。 「くっ…。。」 鳥かごのような檻に入れられた少年は 両手両足を縛られ、魔力封じをかけられていた。 「まぁいい。俺の計画に、お前は邪魔だったからな。 魔力を頂いたら楽にしてやるぜw」 そういうと黒い影は高く笑った。 「魔…の王…… お前に…未来はな…い…。」 「はっ!なんだ!死に底無い王子が! 天の中で一番魔力の強いお前さえ居なけりゃ 天など滅んだも同然!」 「それは…どうかな… 天には…魔にはない…特殊魔法…があるんだ…」 「何だソレは?」 「教えるも…のか…。」 黒い影は怒った。 「なんだこの!死に底無い王子が!」 《魔に属する炎よ!我に力を貸すのだ!》 すると、黒い炎の龍が少年…いや、囚われた王子の目の前に現れ、 そして、王子を炎で痛めつけた。 「くっ…魔のお…う………がはっ…!」 − 運命の歯車は既に回り始めている… つづく。 |