( 無 題 ) 



by
玲於



ある 寒い日
あたしは 貴方を拾った

 寒 い 日 凍 え な が ら 



「ちょっ.....!大丈夫なの!?」

あたしはそう言い、貴方に駆け寄る
そして 抱きすくめ 体温を確認する
――――嗚呼、

 生 き て い る 。 大 丈 夫 だ 。

貴方は まるで 凍り付いたかのように
動かなくて 顔は 真っ青
霰が降る 寒い 日 あたしは 街角で

 貴 方 を 拾 っ た


貴方を 担いで 家へと 足を速める
ぱっと見 貴方は あたしと同い年ぐらいかしら
でも 美少年だった
一言で言うと 

    猫.....

家に着き、貴方を 暖めた
お風呂に お湯を沸かして置く。
ストーブの前に 毛布でくるめた 貴方に
一生懸命 呼びかける

「ねぇ!大丈夫?!」

「ん....」

微かに聞こえた 貴方の吐息
嗚呼、もう少しで目覚める・・・と思い
もうひとふんばり してみる

「大丈夫?」

今度は優しく問うた
貴方の 瞼が 少しずつ 開く

「こ...此処は?」

「あたしの家よ。貴方、凍えてたの」

「見ず知らずの奴を助けるなんて とんだお人好しだな」

貴方は ふ と笑い 立った
その瞬間 くらっと 立ち眩みした 
倒れる前に 彼を あたしの腕の中に入れる

「....無理しないで。好きなだけあたしの家に居て良いから。名前は?」

「彼方....。俺を拾ってくれた飼い主の家に住み着くから。宜しくな。飼い主」

そう言い、 貴方は あたしの 肩に 顔を埋める


「凌鳳、ちょっと手伝ってよ」

「なんであたしが彼方に命令されないといけないのよ」

彼方が 風呂に入っている。
ドア越しに 話す。

「俺の背中流してよー!」

「はっ!?無理っす!!」

男の子の裸なんて見れませんよ。
しかも 全然あっちは意識してない。 憎い。

「なんでよ、飼い主じゃん?...あ、分かった。男に免疫無いんだ。はっはーん」

・・・マジうぜぇ。

「・・・悪かったね。付き合った事なんてありませーんだ!」

「ごめごめ!凌鳳優しいから流してくれるよね?」

・・・可愛い声でねだらないで...

 ・・・ 鼻 血 が 出 る で し ょ う !?  え

「しょうがないわね、背中ぐらい流してあげるわよ」

そう言い、風呂場のドアを開けた

「サンキュー」

彼方の背中は 以外とがっちりと してて
無駄肉が無く 華奢な躰をしている
やっぱり 素敵なのは 顔だけじゃないんだと思った

「何見惚れてるの」

「別に」

石鹸で 彼方の 背中を 擦ってみた
ぬるぬるしていて 気持ち悪い。

「ひゃぁっ!ちょ、なにすんの!」

「何変な声出してんのー。ほら、あっち向いて」

あたしは垢擦りを握り 軽く擦りだした
泡が ふわふわと 立ち
何故か 和んだ


ふと考えたことがある
彼方は 何処から来たのか
でも 聞けなかった
綺麗な 瞳の中に潜んだ 何かが
  見 え な い  

「凌鳳?」

「えっ?」

「大丈夫?何かボーっとしてたけど」

彼方のこと 考えてたなんて 言えない

「いや...別に」

少し微笑んで 彼方を見る
彼方は 少し 頬を赤く染め 下を向く

「彼方?」

「いや...何でもない」

そう言って もう一度 下を向く
あたしは考える 彼方の事を


水音が響く ぴちょん、と

「雨って嫌い...」

彼方がぼそっと呟いた
その姿が とても愛らしく思えた

「なんか...あたしは好きだな...」

ベランダに出て 雨の滴を 手に 当てる

「凌鳳...俺...」

「何?」

なるべく 物欲しそうな声に聞こえないように 頑張った

「...何でもない」

そう言い、顔を逸らす
この頃 彼方は 顔を赤らめ あたしから 視線や顔を逸らす事が多い
あたし、変な事してる?
あ、変な顔はしてるけど。

「ねぇ、彼方ぁ....」

少し声が震えた 

「彼方...あたしの事...嫌いなの....?此処、出ていこう.....として....る..の?」

涙が頬を伝った 彼方は 吃驚したように あたしを見る

「な、何で泣くっ....「ごめん、あたし彼方が好き」

あたしは下を向き 泣く
ひたすら泣いて 泣いて
気が済むまで 泣きたい
でも此処は....彼方が居る

「ご、ごめっ....今の聞かなかった事にして?...」

ベランダを出、部屋に鍵を付け 堪えていた涙を 放つ

「ふぇっ.....」

もう 泣くことしか出来ない


こんこん

軽快な リズムで ドアをノックする 彼方

「...はい?」

出来るだけ 元気に聞こえるように 無理した

「凌鳳?ちょっと中に入れて欲しい...」

「・・・!駄目だよー。今ちょっとぐちゃぐちゃだから」

・・・顔がね。

「なあ、自分の言いたいことだけ言ってんじゃねーよ」

冷たい声

恐い 恐い 恐い

「俺だって好きだよ。拾ってくれた頃から」

 は ? 

 あ り 得 な い     よね?

これって空耳って奴?うん?そうだよね?

「好きなんだって。意識しちゃって俺、顔まともに見れない」

可愛いんじゃない?微妙に。

かちゃっ

ドアを開ける
彼方を 受け入れる

「有り難う。あたしも好きだよ」

少し 引いたけど 未だ 目は赤い

「大好き..大好き...だよ」

2人で そんな事を呟き合い
幸せな 日が 続く


 end...