堕天使たちのバラッド



by
志保







どうしてボクはここにいるのか―

そんなの決まってる。

「ただ傍に居たいから」
プロローグ
この世には、生きたくても生きられない人が居る。

生きたくて、一生懸命で、生きることに必死だ。

なのに、自殺して自らの命を粗末にしてしまう人も居る。

そんなの間違ってるよ。

「ボクが死にたかった今日は、昨日死んだ誰かが生きたかった明日なんだ」

そのことばをバネにして一生懸命生きてきた。


「行ってきます!」

誰も居ないのに言ってみる。見送ってくれる人も居ないのに、手を振ってみる。

ボクは秋塚風香。天星学園の中等部2年だ。ワザと私のことをボクと呼んでみたりする。

今日から、天星学園に通うんだ―

――――――学校――――

「今日は、転校生が来る。皆仲良くするように。では、入ってきなさい」

この声が廊下に響きわたった。少し緊張した。

自分以外の人間を見たことがない。見てみたい―

ガラッ

一瞬クラス内が静かになった。

「・・・・・あ、秋塚風香です。よろしくお願いします」

少し挙動不審になってしまった。

可笑しかったかな・・・。変だったかな・・・・・・・・・。

「秋塚、お前の席は・・・あそこの窓側の席だ」

そう言われたら、その場から逃げるようにして席に着いた。

この席の隣は誰も居ない。一人で気楽だ。馬鹿にされることもない。


第一章 「金糸雀隊」
*-----中休み-----*

休み時間、何故か分からないけどボクの周りに人だかり

質問攻め。ちょとウザイ。

「秋塚さんってどこの学校から来たの?」

「風香の髪サラサラ〜♪」

なれなれしいし・・・・・。まぁぃぃか。

ボクは質問に答えずに黙っていた。

答えたかったけど、答えられなかった。

でも、嫌われたりしなかった。皆優しい。嬉しかった・・・・・

「秋塚さん、友達になろう!」

話しかけてくれたのは三宮理恵さん。

友達になろうって言ってくれた。スゴク、嬉しくて、

「ぁ・・・ハィ・・・」

ちと緊張した。ぃぇた返事はこれだけ。それでも一生懸命。

それで・・・

「それじゃぁ!金糸雀隊に入隊おめでとう!」

・ ・・?金糸雀隊?何だろうそれは・・・・。鳥?鳥に居たよね・・・・・。

一応説明を聞いてみた。

説明によると・・・・・

金糸雀隊とは、天星学園の平和を守るための『部活』である。

隊とはぃぅけど、正式名称は、『天星学園平和を守る会』なんだそうだ。

チームメンバーは・・・・・

控えめな性格の湊未来。元気いっぱいリーダーの三宮理恵。

謎の多い橘可憐。そしてボク・・・冷静沈着の秋塚風香

「・・・って何でボクは冷静沈着なの?」

それを聞くと、「ナントナク」という理恵さんである。

理恵さんの話によるともう一人居るらしい。

「片野絵里って人もいるんだよね。ある日突然居なくなって。
家出の可能性が高いんだけど、駅で見かけたって人も居るんだ。
何故か急に金属バットを持ち歩いていたらしい・・・」

ボクはその人を知っている。
第一章 「金糸雀隊 A」
*-----放課後-----*

放課後は、金糸雀隊の集まりがあった。

「ぇー、今日は【虐め対策作戦!】を計画したいと思います」

リーダーの理恵・・・ではなく何故か可憐が仕切っていた。

理恵は体育の時間にバスケでつき指をしたため保健室。

金糸雀隊の副リーダーは可憐なので、可憐が仕切ることになったのだ。

「最近虐めが多いらしいです。解決するにはどうすればぃぃでしょぅか」

30分も悩み出た解決法がコレ。

「虐めた奴は死刑」

10分ほど可憐に説教された。(連帯責任)

またまた25分悩んで、ボクが一つ提案を出しました。

「解決法を考える以前にどこの学年が虐めをしているんですか?」

これを聞いた可憐はボク以上に挙動不審になった。

何故か周りをウロウロ見ていて、顔中に汗を流し言い出した。

「虐められてるクラス・・・無くって平和です」

皆この言葉にむかついたらしく、可憐に蹴りを入れていた。

『これこそが虐めなのでは・・・・』

今日の集まりは蹴りを入れて終わった。

皆かえりにグチグチと文句を言っていた。

ボク以外の人だけが。
第二章 「男子部員」
誰も居ないのに「ただいま」と言う。

こんな生活もぅ慣れた。

誰からも認められず、ずっとひとりの生活。

「・・・ここまでかんがえちゃうとネガティヴになっちゃうよ!明るく行かなきゃ♪」

必死に明るく居ようと頑張った。

部屋に行き、金糸雀隊の条約を考える。

金糸雀隊に条約はなく、考えなくてはならないのだ。

「そーぃゃ・・・男子部員も居るって言ってたな・・・」

ボケーっとしていて、一日が過ぎていった・・・・・・

*-----翌日-----*

今日は日曜日。学校はなく、部活動だけなのだ―

部室に行ってみると、女子の皆は居なく、男子部員と思われる人だけが居た。

「ぁ・・・あの・・・」

勇気を出して話をかけてみた。

男子部員は、コチラをチラリと見て言った。

「見かけない奴だな。新入部員か?お前見たいのが居るところじゃねぇ・・・。帰れ」

のっけから失礼な奴だ。挑発しているとしか思えない。

「な・・・失礼な奴だ!何だお前――!」
第二章 「男子部員A」
顔を真っ赤にして、夢中で怒鳴った。

スゴク声がでかくて、学校外にも聞こえそうなくらいのでかさだった。

その男子部員は、クスッと笑い言った。

「お前声でけーよ!俺の名前は佐藤雅紀だ。お前は?」

さっきのことなど忘れてる様に、笑って言った。

すこしドキッとした・・・

「ボ、ボクは秋塚風香。昨日金糸雀隊に入った。よろしく・・・」

そう言うと、雅紀も笑って「よろしく」と言ってくれた。

なんか、笑顔が可愛かった・・・


ガチャ


女子部員の皆が来た。

どうしてこんなに遅かったのかは聞かない。

「やーやー、昨日はすまなかったねぇ」

と笑って理恵は言った。

すると、ハッとしたかのように、雅紀のことを紹介しだした。

「秋塚さんには紹介してなかったね。この人は佐藤雅紀。金糸雀隊のスパイ役よー☆」

と、ウキウキと紹介しだした。

『スパイ役かよ・・・』

とか心の中で突っ込んでいた。
第三章 「偽りと真実」
帰り道、家が近いのか雅紀と帰っていた。

勿論、会話などしないでずっと家まで歩いていった。

私の家にもうスグ着くとき、雅紀が話をかけた。

「秋塚、金糸雀隊はお前の思うようなところじゃねぇ。あの事件が起こる前に退団しろ」

そういうと、分かれ道のボクの家の方じゃない方へ歩いていった。

今言わなきゃと思って、僕は叫んだ。

「おい!そんな事言われてもボ、ボクは金糸雀隊やめないからなーっ」

雅紀が振り向いて、笑って返事した。

適当なように。


ガチャ・・・


「ただーいま」

誰居ないと分かっていても癖で言ってしまう。

癖とは怖いものだ。

『金糸雀隊の事件ってなんだろう―』
第三章 「偽りと真実A」
家に居ても、雅紀の言っていた事件の事ばかり考えていた。

ふと、一つだけ気がついたことがあった。

『片野絵里さんの事じゃ…….』

         翌日

授業が終わったらすぐさま金糸雀隊のところへ行った。

今度こそは一番のりらしく、部屋には誰も居なかった。

ただ、テーブルの上に一つのファイルがあった。

【メンバー調査表、片野絵里】

開いてみると、ただ一つだけのページがあった。

そこには、鉛筆で書きなぐった跡があった。

【居場所は此処でありたいのに此処じゃない】

それは、片野絵里が最後に部室に来て書いた言葉だった。