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迷子



by
ルナ





この巴川町の夏のすごし方はやはり祭りだ。
優子が住んでいる町の祭りは3日に1回の確立である。

それもそのはず、この町は日本一祭りが多い町として有名なのである。
今日、この巴川町は夕時から始まる祭りのために昼間から飾り付けをしている。
今日の気温は灼熱、下ごしらえをしている大人たちが汗を流しながら働いていた。

そんな風景を図書館の窓越しから見ている野田優子がいた。
図書館の中は外の空気と違い、ひんやりとしている。
優子はクーラーの真下の位置にある窓に寄りかかり、ぼんやりとしながら大人たちを眺めていた。
世話しなく動く大人たちと、ゆったりとした水色の空。
大人たちと空を比べれば、空はとても大きく見えた。
だんだん眠くなっていくのがわかる。
・・・・・

「優子、宿題みせて」

まどろみ始めた頭が急にハッキリした。
さっきまで近くにいなかったはずの友達の軍団が後ろにいて、手を差し出している。

優子はここにきた理由が急にはっきりした。
友人たちと夏休みの宿題にとりかかりにきていたのだ。
優子はもう宿題が終わっていたが優子の友人が全員、終わっていないと聞き、
ヒマなのと仲間はずれにされたくないのとで、図書館に行くことになったのだ。
もちろん優子の宿題は友人に貸すことになる。

しかし友人たちは、この2時間、まったく机の前で宿題に触れた気配がない。
友人たち全員は、マンガを読みにきていた。図書館にきたかった理由は半分以上がこれだろう。
しかし優子はマンガはあんまり好きではなかった。本自体、あまり優子は好きではない。
なので優子は2時間も窓を見つめていたのだ。

そしてこの成り行きになった。友人たちが渋々目的を思い出し、宿題にとりかかろうとしたのだ。
優子は宿題を友人に渡し、友人たちが図書館の机にむかって宿題をはじめるのをジッと見ていた。
宿題が全部終わった優子は友人が宿題を返すのをまたまたなければいけないのだ。
もしかしたら夕方になってしまうかもしれない。
また窓の外の大人たちを見ている気力はしなかった。
優子は立ち上がり、窓から離れていった。図書館の中をめぐることしたのだ。
マンガのコーナーに立ち寄ってみると、子供たちがたくさんその棚にいた。
インターネットができるパソコンのところにはメガネをかけたカマキリのような男がいたし、
推理小説のところには図書館で働く人が本をそろえていた。
資料、料理、地図・・・
優子はふと、児童書のところで足を止めた。
下をみれば小さい子がたくさんいる。

優子はその中に入っていった。何故だかわからないが、引かれるものがあったのだ。
図書館の中で、ここが唯一落ち着く場所のように。
棚を見てみれば、かわいらしい丸文字の背表紙が目にはいった。

「つきからにげたうさぎさん」
「こわいのだあれ?」
「えかきうたしゅう」
「ピーターパン」
「おまつりのおんなのこ」
「ぞうさんのおみみ」

優子は『おまつりのおんなのこ』のところで目をとめた。
無意識のうちの優子はその本を引っ張り出していた。

赤黒い表紙に黄色い文字でタイトルが書いてあり、その下におかっぱの浴衣をきた幼い少女が描いてあった。
少女は紅い浴衣を着ており、水風船を持って笑っていた。

表紙をめくると、いきなり物語がはじまった。

出だしはこうだった。

「むかし、あるところにおまつりがだいすきなひとたちがすんでいました」


その文の横には、昔話風の浴衣を着たおじいさんおばあさんが描いてあり、踊っている挿絵があった。
優子はページをめくった。

「むらにすんでいるみんなは、わらって、おどって、うたって、おさけをたくさんのんでまいにちおまつりをしました」
(楽しそうに踊ったり、べろべろに酔った人たちの挿絵があった)

「みんなあまりにもおまつりがすきなので、そのまちのおとのさまは、
おまつりのかみさまをきめてみんなでおがもうとおもいました」
(畳のある部屋に数人がお殿様を囲むように集まって、ひそひそ話しているような挿絵があった)

「しかしだれをかみさまにすればいいのか、わかりません」

「きめるのをやめ、おとのさまは、ねることにしました」