リセット
by
瑛菜
| 雨が降り続いている。 受験生だというのに、つい外をみてしまう。 こんなことでは第一志望校には受からない。 必死で机にむかいひたすらペンをうごかすが、まったく頭に入ってこない。 なにやってんだろなぁ。あたし・・・・・・ 「佐伯さん!きいてるの?志望校受からないわよ!」 わかってるって。わかってるから! いっそ、狂ってしまいたい・・・・・・ 一ヶ月前、あたしは特進クラスにいた。 それも、トップ高校受験用の特別クラス。 小さいころあたしは知能面で最高ランクと認定された。 だから今こうして市の期待を背負い、やりたくもない勉強をさせられていた。 裏切ったらどうなるか?言わなくても分かるはずだ。 「おい?どうした?」 こいつは同じ特進の高瀬。 あたしと同じで知能面、運動面で最高ランクと認定された。 陸上部の部長で、まっくろに日焼けしている。 もちろんそんな高瀬を女子が放っておくわけがなく、常に追い掛け回されているようだ。 本人は気づいてないみたいだが。 だけどあたしにとってはただの変態でしかない。 「たのむからこっちによってこないでぇぇ!」 迫ってくる高瀬から逃げるようにあたしは教室を出た。 「わかった者からかえっていいぞ」 中から先生の怒鳴り声がきこえる。 勉強ができなくてみじめな思いをすることは絶対に嫌だった。 だれでも同じだろう。 偏差値が上がらないとこの世界では生きてはいけない。 こんなので先進都市といえるのか?ただの偽物ではないか。 自分たちがただ利用されるだけのロボットだということにも気づいている。 みずたまりが夕日を反射する。 あたしは空にむかって手を伸ばす。 みょうに泣きたくなる夕暮れだった。 「おかえり!テストどうだった?」 またその話?他に話すことがないの? 小さな反抗をこめてあたしはだまって階段をかけあがる。 ほんと、いらいらする。カルシウム不足? ベッドにかばんを放り投げると、あたしはPCの電源をいれた。 いつものようになじみのチャットルームへ。 じつは、此処にあたしのあこがれの人がいる。 きっとかなわない。それは知っている。 けど・・・・いったん暴走しだした気持ちは誰にも止められない。たぶん、告白するまで。 どうせふられるだろう。そのあとは、落ち込む。 落ち込んで、立ち直ればいい、とおもうけど、振られるのが怖かった。 「也はさ、どこのがっこーいってんの?」 それとなく、聞いてみた。 「えー言っていいのかなー成深中だよ」 「えっ!?いっしょなの?」 「自称先進都市のだよねー」 どうしよう。今はだれもいない。チャンスなのに。 「あのさ〜・・・・・話したいことがあるんだけど」 おもわず、手がふるえた。 「何?」 「ごめん。あたし、也のこと好きだったみたい」 スカートで手の汗をふいた。 「ごめんね、もう落ちる。明日屋上でまってるから」 きゅうに胸が苦しくなって、はきそうになった。 あぁ、はやく明日がくればいいのに。 次の日は、心ここにあらずだった。 あたしのまわりだけ、フルスピードで時間がすぎていく。 目が回りそうなくらいに。 あしどり重く、屋上への階段をのぼる。 泣くか笑うかは運しだい。 がちゃりと、鈍い音がしてドアが開いた。 「・・・・高瀬?なにやってんのこんなところで?」 「朝未・・・やっぱりそうだったんだ」 「え?なにって?はっきりしなさいよ」 「『也』は・・・・俺だ」 ぇ?ちょっとまって?時間がほしい。 状況がさっぱりつかめない。 ひとつずつ整理してみる。 ・・・・・まさか『也』は高瀬なの? 「あたしが『レナ』だってなんでしってんのよ?」 「おまえ、メールくれただろ?それが『朝未』と同じだった」 うそ・・・・・・・。 「昨日はああ言ったけど、あたしは『也』が好き。『高瀬悠汰』なんて嫌いだから!」 そういいはなってあたしは乱暴に階段をおりていく。 ふられるほうが楽だった。 あたしの中でプライドがこなごなにくだけちった。 もしかして今あたしは高瀬を好きになりかけてるのかもしれない。 つまづいて、ころんだ。 たちあがる気力も失せてしまった。 あぁ、あの日にもどれたら。 告白なんてしなかった。 つみあげられた嘘の世界。 はいってしまうと二度ともどれない・・・・・・・ |