DEEP LOVE!



by
かの



~別れ~
「俺と別れて欲しい」

――理解不能

「ごめんな。俺、好きなコ出来た・・・。
 そんな気持ち持ったまま里美と付き合ってたら
 ・・・オマエに悪りぃから・・・」
「・・・え?」

――突然何を言ってんの、リク

「今までアリガトな」
「・・・なんで・・・」

ウチ、越前里美の彼氏だったリク。
今屋上でこの台詞を言われるまでは―

“別れて欲しい”

唐突すぎて涙のひとつもでない。
『好きなコ』ってウチより大事に想ってるって事?―・・・

ねぇ・・・リク。

別れの合図のように南風で桜並木が
ざぁっ…っと揺れる。

―こんなの…切なすぎる・・・

「じゃあ・・・」
「………」

―声が出てこない。頭の中、カラッポ。

言葉を探しているうちにリクは去っていった。
大好きな背をウチに向けて。
その背中はただただ…眩しくて・・・
どうしても呼び止めることができずに静かに見届けた。

「はぁー…」―虚しき溜息

―こんなの…どうなの…?

まだ想っているのに一方的に残されたウチって…何?

フェンスに指を絡めて強く握り締め激しく左右する。

キィキィ…

幾度も痛々しい音が響き渡る。

―悔しい…よ スゴク 

所詮ウチって・・・
他に気を惹かれていたなんて…

―笑えない…よぉ




…そろそろ落ち着いてきた。
その分辺りは真っ暗闇だけど。
ということは…
イコール涙が押し寄せる。波のように。

リクと過ごした日々―
初デート。…喧嘩、お互い分かり合えた日。
気持ちが通じ合った時、キスした日etc...

一年間の思い出は重すぎて…
今日だけでは涙を枯らせない…っ…

ウチはこれからどうすればいーの…?―
~決意~
翌日―

「里美ィ!!」

―靴箱で何にも知らない奈々がいつも通り笑みをぶつけてくる

“いつも通り”じゃないウチはうん、と下を向く。

―いつの間にか…
リクとの毎日、当たり前になっていた…
幸せを当たり前だと無意識に日々を過ごしていた…

存在の大きさって…って失ったトキに
凄く怖い・・・
身動きが取れなくなるくらいに。

何かを察した奈々が心配そうにウチの顔を
覗き込んでくる。

奈々は親友。いままで何でも話してきた。

「目ェ腫れてるし…、昨日サボるなんて珍しいじゃん!
 何か・・・あったんだよね?」

―だけど今回は、認めたく…ない

「今は…言えない…やっ」

多分奈々は感ずいてる。だけど深くは問い詰めてこず、
そっとして置いてくれた。

―ありがと・・・

クラスに居るリク。

腫れた目に気付かれないように前髪をいじりながら
教室に足を踏み入れる。

ドクン…ドクン…―鼓動の音が反響する…

「キャハハ!」―居た。

リクはクラスの男子と他愛も無いことで笑っている様子だった。
昨日ウチを振ったのに…と少し腹が立ったけど
すぐさま、その感情は失せた。

―やっぱ格好良いって思っちゃうんだ…
まだ好きだから…リクの事。

学校が終わって一人で家に直帰した。
いつもなら奈々と肩を並べて笑い声が絶えない帰り道。
今日は一人にして、って言った。
奈々は口角を軽く上げて、首を縦に振ってくれた。

―そんな暗くて、出口の見えない日々を繰り返してたウチ・・・

一ヶ月が過ぎたある日―

お風呂上りに、洗面台の鏡でじっくりと自分の顔を
全部さらけ出した。
重く腫れぼったいまぶた、瞳の下のクマ、くっきりと残った
涙の跡…。

―ずっとこのままじゃ・・・駄目だ!

ウチは新たな決意を掲げた。