恋想い



by
かの



一話
ボールが激しく地面に打ちつけられる音。
バッシュの鳴き声。
つまり―…ここは男子バスケ部。

「格好いい…」

あたし、浜野あおいの視線が向けられた先には
ゴールを決めガッツポーズをしてる先輩、神田ケイ。

入学当初、初めて先輩が視界に入った瞬間…

恋に堕ちた…

一目惚れなんて、あたしは絶対ないと思ってたのに
簡単に…純粋に先輩のことをスキって想えた。

その後、高校で出来た友達、美穂に協力してもらって
先輩のこと知れたり、話せたりした。
美穂には感謝でいっぱいだよ…。

「試合終了!!」

審判の図太い声で我に返った。
あ…今だッ!先輩にタオル渡しにいこ…///

緊張は一歩ずつ大きく変化するんだ―

「ケー先輩っ」

あたしの声が震えてるのを先輩は気付いていましたか?―…

「おぉ浜野」

―!
名前覚えてもらったんだぁ…
感動して周りが一瞬真っ白になる…

先輩の綺麗な金髪に汗が光ってる…
そんな光景を見て本来の目的に気付いた。

「お疲れ様ですっ。ゴール格好よかったですっ…///」

そうどもりながらタオルを差し出した。

「ありやと。タオルもさんきゅな」

先輩は白い歯を出してニッと笑った。

―あたしに向かって…

―先輩…大好きだよ///

「浜野…あのさァ」
「ケー!!リング上げんぞ」

先輩はふっと一瞬振り返って「ごめん。ありがとな」と
一言残してリングを上げに行ってしまった。

今何言おうとしてたんだろ…?
でも名前で呼んでもらえたし…進歩だよね。

あたしは体育館を後にした。
―明日も先輩と話せるかな?
と期待を抱きながら―…
二話
「あおい!」

あっ先輩だ…///
私の元に来てニッっていつもの笑顔…

「お前のこと好きだ」

―え…

pppppppppp...

「ん…夢…?」

なんだ…夢なんだ…
覚めたく…なかった―

「…ありえないしっ」

切ない想いを無理矢理掻き消して
自分の部屋をあとにした。

―現実は…受け入れなきゃね!!

「おはよ、あおい」
「美穂…はよ〜」

欠伸をしながら言うと美穂が軽く笑った。
でもなんか作り笑いな気がして…

「何かあった…?」

思い切って聞いてみる。

「…雄哉と別れたの」

涙を目に浮かべてる、美穂。
これはただごとじゃないなぁ…

「ちょっと話そっか」

美穂は俯きがちに頷いた。

あたし達は1限目をサボって
屋上へと向かった。

「雄哉ね…浮気したんだ。
 そのことあたしが怒ったら…」
「うん」

あたしは相槌をうつ。

「…殴られたぁ」
「…え?」

びっくりして言葉が出てこない。
あんな優しそうな雄哉が…暴力?

「『お前みたいな女、本命な訳ねぇだろ』て…
 怒鳴られちゃった…。…ハハ」

無理に笑わないでよ…―
涙を必死にこらえる美穂を見てると…胸が痛む。

「泣いていいんだよ…」


あたしは美穂の震える背中をそっとさすった。
その瞬間、美穂の涙腺が緩んだ。

「辛かったね」

―泣きたい時は存分に泣けばいいんだよ

放課後

結局、美穂とあたしは一日サボってしまった。

美穂はずぅっと泣いてて、雄哉を想う気持ちが
これでもかってぐらい伝わってきた。

「泣いたら…スッキリしたぁ!!」

今度はホントの見慣れてる笑顔。

「ありがと、あおい!!」
「どーいたしましてっ」

あたしは目が真っ赤に腫れた美穂を
ある場所にどーしても連れて行きたかった。

「ねぇ何処いくの?」

それは―…体育館

あたしも落ち込んでいるとき…
ケー先輩たちのプレイみると…復活しちゃうから。
パワーをもらえるんだ。

今日はT高との練習試合。

―先輩…今相手抜いたよっ…!
格好いいなぁ…

「うわぁー…こんなに迫力あるんだね。
 …あの先輩すごっ!!イケメンだし…」

美穂の人差し指を追ってみると…

「アキラ先輩だよ!」
「よく知ってるねぇ…」
「ケー先輩と仲良いから、あの先輩」

「そっか」といって微笑んだ美穂は
頬が紅色に染まっている。

「…惚れたとか?」

美穂は黙り込んでにやついた。

「図星…だね」
「昨日別れたばっかなのに…
 突然すぎだよね…?」

―恋はいつだって、『突然』だよっ…

「一緒に頑張ろっ」

新たに頑張る気持ちが生まれた―
美穂とともに…
三話
授業中、太陽に容赦なく
照り付けられたグランドをぼんやり眺めながら
あたしはつぶやいた。

「もーすぐ夏休み...」

最近、先輩のことを考える時間が増えた。
―理由?
理由なんてない…“好き"が大きくなってるだけのこと―…

はっと我に返って教科書に目を通すと
一枚の手紙が置かれていた。
周りを見渡すと遠くの席の美穂と目があった。
どうやら美穂が発信源らしい。

『DEARァォィ♪*。
 急にゴメン;;ぁのさ,センパィ達の
 公式戦てぃっだッケ??
       美穂ょりッッ(*´∀`)v』

「七月の第三土曜日だよ、公式戦」

授業が終わるとすぐさま美穂のところに
行って教えてあげた。

「それって夏休み入ってるよね??」
「うん!一緒に応援いこー」

首を縦に振って微笑む美穂―

―元気になって本当よかったな…

帰り・・・

あたし達は帰宅部だから授業が終わると
すぐに帰れる。

「あおい、帰…」
「皆、ちょ聞いて!!」

クラスのバスケ部の男子の陽一が叫んだ。

「3年の先輩が今までバスケのマネやってたんだけど
 受験だから引退すんの!!
 そんで2年で2人しか立候補しなかったから1年でも
 2人でれるんだけど…」

バスケ部のマネージャー…??

「やりたい女子いねぇ?!」

美穂と目で合図して…

「はいっ」
「はぁい」

そしたら陽一は安堵の表情浮かべて

「よし、じゃぁ美穂とあおいな!!
 今日から来れっか?」
「うんっ」

胸が弾む。毎日ケー先輩と逢えるんだ…!
こんな嬉しいこと、ないよね。

美穂とはしゃぎながら体育館へ向かっていった。
四話
体育館の扉はいつも開けっ放し。
そこを少々急ぎ足で抜ける、あたし達。

「ケー先輩、どこだろ…?」

―早く逢いたいっ

「あ、いたよ!なんか3年のマネさんと
 話してるっぽいけど…」

え?…

美穂の視線の先を追ってみる。

―本当だぁ…
先輩、すごい笑ってるし・・・

あんな笑顔、勿論あたしの前で見せたことないよね…

不安と嫉妬…なんて憎い感情なんだろ…
あたしなんてまだ子供だね…―

「一年のあおいですっ…///」

マネ紹介の時、先輩を視界から外して
緊張を和らげようと必死なあたし。

さっきケー先輩と仲良さげに話していたのは
マキ先輩という人だった。
さっきは笑ってる先輩の顔に夢中だったから
気付かなかったけど…
すごい美人で眼鏡をかけていて…知的な感じ。

―あたしとは比べ物にならないなぁ…
独りで苦笑してみる…

自己紹介を終えると3人の先輩があたしを囲んできた。

「俺、海斗ぉー!よろッ」
「俺ぁタケル」
「あおいチャン可愛いねー!!俺、貴広ぉ」

先輩たちは皆イケメンで…変に緊張してしまった///

海斗先輩は前髪がちょんまげで可愛い感じ。
タケル先輩は背が高くて顔立ちが整ってる。
貴広先輩は口と耳にピアスが光っていて軽い印象。

「…願いしますッッ;;」

一瞬目を背けたそのとき―
見ちゃったんだ…

ケー先輩とマキ先輩のキスシーンを…

目の前が真っ白になる…―

その後のことは…覚えてない…

目が覚めたら医務室だった…。
五話
「浜野、大丈夫かァ??」

目を開けていきなりアップで視界に飛び込んできたのは-…

タケル先輩だった。

「ぁ…れ??あたし、どうして??」

ベッドのすぐそばにある窓から差し込む光は…ない。
つまりもう夜ってこと…??

「いきなり気ィ失って倒れたからびびって
 此処に連れてきた」
「ぇ…、タケル先輩が??ずっとついててくれたんですか…!??」
「まァな」

どきっ…タケル先輩って凄い優しいなぁ-…

「ありがとございますッ...!」
「いやいや。てかもー動ける?」
「はいっ」

学校を出ると辺りは予測通り真っ暗で…月の光だけが
煌きを放っていた。

「乗れ」

先輩が自転車にまたがりながらつぶやく。
あたしはきょとんと先輩の顔をじっと眺めた。

「早く乗れよ。…送ってく」
「いやっ…悪いですって!」

医務室まで運んできてくれ、ずっと夜まで
あたしについててくれて…更に送ってってもらうなんて・・・、
悪すぎる…。

「うっせぇ。危ねーから」

だるそーに先輩が発するとあたしを強い力で
引っ張って強制的に後ろに座らされた。

うわっ・・ドクンッ・・・

「家、どこ??」
「…ずっとまっすぐ行って左のトコです…;;」

先輩の肩をそっと掴むとほんのり温かかった。

「なぁ」

唐突に話しかけられて少し驚きながら返事を返す。

「はぃ…?!」
「そんな神田が好きか?」

-え...?

今・・・やっと倒れる前の記憶がタケル先輩の言葉により思い出された...

ケー先輩とマキ先輩のキスシーンが鮮明に頭の中で再生される。
何度も何度も・・・-

目の前の景色が揺れた。

「ちょ…浜野…泣いてるのか」

ちょうどあたしの家の前に着いたときだった。
タケル先輩はブレーキをきってあたしをそっとおろした。

「ごめんな…?変なこときーて…」
「いえ…先輩のせいじゃないんで・・・」

すると先輩の複雑そうな表情が外灯にそって
浮かび上がった。
そしてスクバの中から何かを取り出して
ペンで書き込んだ。

「ほら」

おでこに何かをつけられ涙ぐみながらあたしははがした。

黄色いフセンだった。

『090XXXXXXXX XXX@XXX.ne.jp』

「携帯番号と…メアド…?」
「俺にしとけよ」

-…え??

タケル先輩の真剣な顔…

どきっ…あたしの胸はより一層高鳴った…
六話
「えっ...マジ?!!」

今は昼休みの屋上。
天気がよかったから美穂と此処で
お昼ゴハンを食べている。

メロンパンを頬張りながら、昨日の
タケル先輩とのことを報告し終わったとこだ。

「てかー昨日気がついたらあおい消えてて
 帰ったのかなー??とか思ってたしぃ」
「ありえないからっ笑」
「・・・で」

本題に戻らせた美穂の低い声…

「どーすんの??連絡はまだしてないんでしょ??」
「…ん。・・・ケー先輩ってマキ先輩と付き合ってんのかな…?」
「なんかね・・・アキラ先輩にきいたら…そうらしーよ」

やっぱり… ズキッ

―普通は此処で諦めるのかな…??
―普通ならタケル先輩に乗り換えるのかな…??

心が…いたい…ッ

またあのシーン… ヤだ・・・ もぉ…疲れた 

涙が溢れる。美穂がそっと背中をさすってくれる。


「もーわかんないっ...!!」

炭酸を一気に飲み干した。

あたしどうすればいい...??

この恋は…ケー先輩への想いは




実らないの・・・・・・・・・?





重い気持ちのまま、授業へ入り・・・放課後

「あおいっ…行ける??」
「うんっ・・・!!マネなんだから行かなきゃだもん」

無理矢理笑顔を作って体育館へ向かう。
そんなあたしを見透かすかのように美穂は目を細めていた。

休憩時間に部員たちにタオルを配ってると
タケル先輩の番になった。

まだ連絡してないから…ちょっと気まずい。

「どーぞっ...」
「おう・・・」

次は…ケー先輩。

無言でタオルを差し出す。
声を出すことが出来なくて・・・

「…」
「アリガト!!…大丈夫か??」

下から覗きこんでくる先輩のアップ。

ドキドキ

やば…泣きそう…


だってまだこんなに好きなんだもん…



「先輩、こっちきてください」


言う。逃げない。
運のいいことにマキ先輩はまだきていない。


体育館の裏へついてきて貰った。

「先輩っ・・・!!もー嫌ッ…
 こらえきれないので…言います…。






 好きです・・・ッ!!」







涙声で…そう告白した。
七話
「え・・・??」

ケー先輩はあたしの突然の告白に目を見開いた。

「マジ…でか??」

―冗談で言う訳がないよ…真実なんだから…
もしタケル先輩に逃げたって虚しいのは目に見えている。

「はい…」

すきなの…しょうがないんだよ…っ

先輩は下にうつむいて黙り込んでしまった。
結果が…わかった。

「…知ってます。マキ先輩と付き合ってるんですよね…??
 気持ち、伝えたかっただけです。あたしの気持ち…ぅっ」
「…浜野…。ごめんな…。マキがいる…」

涙をただ流した。やるせなくなって…とにかく切なくて…
春にはあんなに満開だった桜の木の枯葉が霞む。

―こんなトコで泣いても先輩に迷惑かけるだけなのに…

瞼をそっとおとす。涙を封じ込めた。

『泣くな』『強くなれ』

「いきなりすいませんっ!!先輩…マキ先輩とお幸せにっ」

作り笑いで大声を発した。
辛すぎる。本当はこんなこと言いたくなかった。
言いたく無かったよ。

「…ありがとう。マジありやと。じゃ…行くな」

最後に先輩が見せた苦笑い。優しい証だね。

先輩が去った後もずっと体育館裏で独りしゃがみこんでいた。
涙が何粒も地面に染みを作り上げる。

―こうしてあたしの高校最初の恋は…終わりを告げた。

「何時だろ…??」

辺りは薄暗いが不思議と不安はなくて。

携帯をチェックすると美穂からのメール。

『あおい。何処にいるの??』
『ごめんね、さき帰るね。連絡待ってるヨ』

美穂…心配かけてごめんね??―

「あたしも…帰ろうかな」

バムバム…

ん??今はPM7:00。部活は6:00に終わったはずなのに
何でボールの音がしてるの??―

体育館の扉からひょこっと顔だけ出して、覗いてみた。

スパッ… タケル先輩がレイアップシュートを決めた瞬間―

視界にとても格好よく映った。

「先輩ッ」
「浜野……」

こっちを振り向いた先輩はたいして驚いてはいなかった。

「自手練…頑張ってください…!!さよ…」
「ちょい話さねー??」

別れの言葉を遮った先輩は強い目をしていた。

「…いいですよ」

断る理由なんて…ないよね??

ゴールの下にタケル先輩がどかっと横になったので
あたしは近くにちょこんと座った。

「何…作り笑いしてんの」
「え…」

―ばれてた…??

「え…そんなことないですってばぁ!」

嘘の言葉と微笑みで返した。

「嘘付けゃ…馬ぁ鹿」

この言葉によって頬が引きつった。

「別良いけどよ…俺の前では隠すな」
「…はい」

あたしの返事を確認すると先輩は眉間に皺を寄せた。

「あんさぁ…神田に言った?」
「へ…??」

何で知ってるの??

「タオルん時、連れ出してたし。そっかなって。違うか?」
「その通りです…」

思い出したくない…。…開き直ったほうが傷つかないでいいよね。

「ふられちゃいましたぁー。はは…」
「そうか…」

『泣くな』…やだよ…。弱いあたしは嫌い…だよっ

寝転がっていた先輩は急に起き上がってあたしを引きよせ…
ぎゅっと強く抱きしめた。

―え…

「泣け…辛いときは泣きゃぁいいんだよ」
「う…うっぁあぁ…!!」

それからあたしは赤ん坊のように先輩の温かい胸の中で泣きわめいた。

いくら泣いても泣いても…足りなくて…―

あたしが少し落ち着いてきたときを見計らって
先輩は低音な声でつぶやく。

「なァ…俺にしろよ…俺なら…泣かせねぇ…ぜってー。
 浜野がこうやって寂しいときに言うの…卑怯だけど…、
 俺…マジだから」
「駄目…。まだ…あたしの中にケー先輩がいるの…。
 消えないの…いくら忘れようとしても…」

―このまま先輩と付き合ったら…きっと
ケー先輩とタケル先輩…比べてしまいそうで怖かった。

「そんでもいい。消してやる。俺が…
 神田を忘れさしてやっから…」

抱きしめるタケル先輩の腕が強くなった気がした。

―いいの??…駄目…甘えちゃ駄目だよ…

「マジでいいから。俺のこと男として見れなくても…
 好きにさせてやるし」

歯を少し見せて笑った優しいタケル先輩。

―いいのかな…

「先輩…考える時間を下さい」

―ちょっと休みたかったんだ…

「あァ」

…いろんなことがありすぎて―
LAST
その日の晩―…

あたしはリビングで夕食を済まして、
すぐに自分の部屋へ戻った。

「…メールしてみよっかな」

―タケル先輩に
そう思って携帯をスクバから取り出した。

ケー先輩のコトはもう…忘れなきゃ…っ―
辛いケド苦しいケド…いつまでも過去に捕らわれていたら駄目だ…

―あたしはこれからのコトを考える
…―前に進むよ

前、額に貼り付けられたフセンも机の引き出しから出す。
そしてゆっくり携帯のアドレス張に入力した。

「なんて…書こ」

さっき二度目の告白をしてくれた…先輩へ―

『タケル先輩。届いてますか??あおいです』

シンプルに送ることにした。
メールの返事は…15分後にきた。

『届いてるよ。返事…、ゆっくりでいーから』

先輩…優しいね…―

改めてそう感じて…今日三度目の涙を流した。
携帯に水滴がつたっていく。

―あたしは泣き虫だなぁ…

独りで苦笑してしまった。

―次の日…

「おはよ!あおいっ」

スマイル満開の美穂と下駄箱で鉢合わせして
あるコトに気付いた。

「ごめんっ!メール、返すの忘れてたぁー」
「いーよいーよ。…何かあったの??」

美穂には嘘がつけないな・・・

「相談…のってくれる?放課後」

―屋上

フェンスにもたれかかりながらラテを飲んでいる美穂。
その隣で昨日のコトをじっくり語る、あたし。

話し終えたトコロで美穂は、安堵の表情を浮かべて
あたしの頭を撫でてくれた。

「よぉく頑張ったね。告白」
「…うん。あたし、これから…どうしよ」

すると美穂はフェンスから離れて
あたしの目の前に来た。

「少しは…甘えて良いんじゃない??タケル先輩にサ」

―いいのかな…

「だってさ、信じろって言ってくれてんでしょ??
 …重ねちゃうことがあっても…二人で乗り越えれば
 いいんじゃないかな…ゆっくりいければ」

顔にかかったストレートの髪を耳にかけ、
真剣な顔で言ってくれてる。

―そうだね…ありがとう、美穂…タケル先輩

「ありがとっ!!」

ドアに向かって全力疾走。
階段を二段飛ばしで駆け下りる。
渡り廊下を走り抜ける。

―向かった先は…体育館

想い出のいっぱい詰まった場所。体育館。

「タケル先輩ぃっ…!!」

シュートの練習中だったけど、タケル先輩は
部活を中断して来てくれた。

タケル先輩は入り口付近のあたしに
こう問いかけた…気がした。

『お前が言うコトはわかってる』

言葉に出さなくても先輩の哀しそうな瞳が
そう語っていた。

―フラれると思ってるのかな…先輩…

「…あたしなんかでいいんですか」

そう呟いた途端、先輩の俯きがちだった
顔がぴくりと動いた。

「それって…」
「あたし…タケル先輩といたいです」

震えてしまう声。

先輩は見る見る笑顔になっていく。

―愛しくてたまらないよ…

「…俺超うれしんだけど」

ぎゅーと抱きしめられた。

―幸せってこういう事、言うのかな??

「ありがと…あおい」

―ありがとう、はこっちの方だよ…
『あおい』って呼び捨て…つい頬が緩んだ。

二人を祝福するように南風がふわっと吹いた
おまけ
タケル先輩とあたしが結ばれた日から
5年の月日が流れた―

「あおい、行ってきます」

玄関からリビングに居るあたしに叫ぶタケル。

「えっちょっと待って!!お弁当忘れてるよっ」

焦ったあたしは、出来立てのお弁当をブルーのケースに入れて
急いでタケルの元へ駆けつけていった。

「あァ悪い…」

苦笑いをしてタケルがドアノブに手をかけた。

「あっもう一個あった、忘れもんっ」

え??―あたしは振りかけていた手首をぐいっと
引っ張られた

ほっぺに温かい感触…―

「んじゃあな」

意地悪スマイルでタケルは家を後にした。

ギィー…バタン

「…照れるって///」

…ひとりで盛り上がる、あたし。

あれから…あたし達は喧嘩を何度もして
何度も別れ話が切り出されたけど…二人で乗り越えて

見事結婚にまで辿りついた―

『一生守る』 ―タケルらしいプロポーズの言葉

あたしは…この幸せ…一生守っていくよ…―
だからタケルはあたしを守って??―

洗濯物を干そうと庭へくりだした。

真上には―澄んだ空…

―永遠の恋って…あるよ…

ずっと想っていれば…絶対。

ずっとずっと…恋しよう。

恋想い―…