幼馴染 


by
かの



わん
ねむ。あくびをひとつ。

『あたしはいま恋をしている』

瀬良くんに。

『恋してるの』

だけどダイゴローがじゃまをする。

ダイゴローっていうのは陽(よう)のこと。

あたしの飼ってる柴犬・大五朗におめめがそっくりだから。

あたしのオサナナジミ。意地悪。ほんとは優しい。

だけどダイゴローはじゃまをする。

でも今日こくっちゃうもんね。

だからおじゃまむし・ダイゴローともおさらばだ。

OKなら「ほら見なさい」っていばれる。

NGならあっちがきをつかって離れていくだろう。

「お待たせ」

あ、瀬良くん。格好良いなぁ。

「瀬良くん、好き。付き合って」

どきどきしてる

「ごめん。お前みてえなブス、彼女にするとか無理」

あれ?おかしいな、いつもの瀬良くんじゃない。

「え」

やっと漏れた声

そのころにはもう、瀬良くんはいなかったね。

ずきずきしてる。どうしよう。

すごくダイゴローに会いたい。会いたい。会いたい。

ゆびをふるわせながらダイゴローの携帯番号をプッシュする。

もう暗記している。だってあたしたち、オサナナジミ。

るるるるる…るるるるる… 呼び出し音。早く出て、お願い。

「んっ?悠(ゆう)どした」でた。その瞬間、涙がばーとあふれる。

「ダイゴロー・・・ぶす言われた〜」

「はー?・・・解った、今がっこか?直ぐ行く」さすがオサナナジミ。

「うんがっこ… っ」 つーつー 切れた。がっこって解ったのかな?

あああ。あたし馬鹿だ。ダイゴローは気付いていたんだ。

なのに、じゃまものあつかいした。

まあ、いっか、オサナナジミだから。
つー
わーん。わあん。ずっと泣いてた。これしか記憶がない。

気付いたらダイゴローが家まで送ってくれてた。

送ってくれた、ていっても同じマンションの同じ階の

隣の部屋にダイゴローは住んでいるんだけど。

オサナナジミだから。となり、なんだ。

ちょうど携帯が鳴った。メールだ。

メールを確認する前に時刻を確かめた。

AM1時。本当に記憶がないな。

[悠、お前泣きすぎだよ(笑)ウルサイ。寝られね〜]

ダイゴローだった。あたしは壁を叩く。

この壁の向こうはダイゴローの部屋。

ココのマンションは結構壁が薄い。だからって泣き声が

寝られない位くらい 聞こえるものかな。少し笑った。

きっとダイゴローは小さな小さなあたしの泣き声を心配して

メールをくれたんだね。わかるよ お見通し だよ。

少し遅れてあっちも壁を叩いてきた。

あたしは返ってきた、ココンという音に安心してベッドにもぐりこんだ。

ありがとう。ダイゴロー。瀬良くんのこと吹っ切れそうだよ。

ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ…

目覚ましのアラームが作動した。

きょうも一日がはじまる。

トーストとココアの朝ごはんを済ますと

あたしは家を出た。隣からもドアのキイ…という音が鳴った。

ダイゴロー。あたしは急にダイゴローが愛しくなって。

「おはよ、陽っ」

「ん、悠、その名前で呼ぶの久しぶり」

ダイゴローがふはっと笑った。格好いい。

きょうも一日がはじまる。

「佐川くんて彼女いるらしいよ」

え。うそだ。あたしがダイゴローの事で知らないことはない。筈。

「いないよ。ダイゴローだよ」

笑い飛ばす。だけどアカネはゆずらない。

「佐川くんて超もてるじゃん、あたし、女の子と歩いてるの見たし」

ダイゴローってもてるの。たしかに顔は悪くない。

だけど部活にしか興味ない、野球ばかじゃあないの。

あたしはダイゴローにメールする。同じ高校なんだから

会いに行けばいいんだけどさ。なんかイヤ。

[バカ。] それだけ。ばか、ばか。何でかくすの。

オサナナジミじゃあないの。ねえ、陽。