死神くれよん



by
あき!★



世界には

表、裏、天国、地獄

いろんな種類がある。



それでも皆に知られていない世界、
それは

――――――死神界
第1話 門の前
【死神】それは人の魂を狩る者。
人は死ぬ間際に死神を見るという。



「…いたい…どこここ……」


中野有里、さっきまでは平凡(マイペース)な中学3年生だった。
受験時期でもちろん勉強ざんまい、なはずだったんだけど…

友達(?)と重要な話をして
そのあと逃げるように去ろうとしたのが不運だった。


前から車がきて、そのままドカーン。


事故は痛いって思ってたけど
そんなに痛くなかったって事が一番驚いた。


そして、ここは何処だろう



「…学校みたい…おっきい……」

目の前に広がるのは
変わった形の学校。

そこらへんの学校の10倍、100倍、そんぐらいある。



別に「ほかの世界に飛ばされたー」とか
「ここどこ!?帰りたいよぅ」とか
そーゆうふうな感情はあいにくもっていない。



まぁ、全部過去のせいなんだけど。







そんで、ここ、どこ?
第2話 死神風紀
「はいはーい、そこ邪魔だよー」

後ろから低い声がした。
振り向くと、そこには一人.自分と同じくらいの歳の男が立っていた。


腕には【死神風紀】と書いた物体を身に着けている。


しにがみ、ふうき?


死神ってアレだよね
人の魂を狩るって言われてる人でしょ?

でも
印象が違った。

死神っていえば
黒いマントに顔はドクロでかまを持ってて……



「もしかして…あぁー…そゆこと」

例の男は一人で納得したようなポーズをしている。


「…死んだんだね」








し、んだ、?



「…だれ、が?」
「名前は?」
「…ユウリ…」





「 じゃあ、有里




  君が、
 


  有里が死んだんだ 」



衝撃な真実を、私は耳にした。


これが、始まりだった。
第3話 過去@
死んだ、あぁ、死んだんだ。


別に驚く必要はない。
だって、自分から車に飛び込んで行ったから。


死んだっておかしくない。

もし死んでなかったら、
もう一回飛び込んでたかもしれない。




あの世界はつまんなかった。



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小学校低学年までは
自分は幸せなもんだと勘違いされてた。



間違った事があったら、すぐ親に叩かれる。
これが日常茶飯事。


だけど、これが普通だって
ずっと思ってたんだ。


親は普通に優しかった。
いつも笑顔でいた。
喧嘩をするといつも叩いてきた。

もっていたベルトで叩かれたりした。


だけど、これは、皆やられてること
そう思って
痛みを必死に我慢してた。





だけど、小学校高学年になってから
私の生活はいっぺんした。
第4話 過去A
「DS買った?」
「買ったー!PSPもー!」


クラスの女子と男子がゲームの話題で盛り上がっていた。

DS、PSPって高くて普通の人はもってない
そう思ってたのに、半分ぐらいの人は全員持っている。



「いーなーDS!貯金してたの?」

私も貯金して買ってみようかな、とか思ってたりすると
友達からはありえない言葉がでてくる。

「え?親が買ってくれるにきまってんじゃん!」

「私も親だよ?」




…親が買ってくれるなんて
どんだけお金持ちなんだよ、
って突っ込みして笑った時が何回もあったけど


内心
驚いてる


だって、自分の場合


「DSほしい」
って言ったら
「ダメよ、お金がないの」


ってすぐいわれて
欲しい欲しいいってたらすぐ殴られる。

これが普通じゃないの?




「てかさー、有里って傷いっぱいあるよねえー。怪我?」
友達の一人が顔を覗き込んで聞いてくる。


「え…皆ないの?」


だって叩かれたり殴られたりすると
あざができるなんて当たり前じゃん、
とか心で笑ったりしてたけど

あの一言で、自分はおかしいと気づいた。


「…もしかして虐待されてるの?」



虐待
それは
何?
第5話 過去B
それから
私の親への態度は変わった。

虐待
されてるんだ

私はおもちゃ代わりにされてるんだ。
自分は普通じゃないんだ。


友達の腕とか顔とか足とか
全てがうらやましかった

怪我とかが何もなくておかしいって……

でも、おかしかったのは



中野有里、私。


 
 
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中学3年生になって
私は孤立している。


前までは
皆が羨ましくて
ずるくて
憎たらしくて


だけど今は
どうせ不幸なら、もっと不幸になりたい


そう思ってきた。



こんなちっぽけな不幸なんて
楽しくない
スリルがない。



たまーに

『学校で殺人が起きないかな』
とか思ったりする。




テレビで見るニュース
隣から聞こえる子供の泣き声
育児放棄


たくさんの不幸を抱えた人が
羨ましい


どうせこれからも
『虐待』ってものをされるなら

こんなちっぽけな不幸より
もっと堕ちてみたい


不幸に堕ちたい
不幸におぼれたい



全て、どうでもよくなるんだよ。